企業法は「覚えた者勝ち」ではないよ
会計士試験を目指す孫へ、会計ばあの助言
〜シリーズ4:条文の言葉を追うだけでなく、なぜそうなっておるかを考えるのじゃ〜
孫よ、企業法の勉強をしておると、「条文が細かい」「似た制度が多い」「覚えてもすぐ混ざる」と感じることがあるじゃろう。
その気持ちはもっともじゃ。企業法は、表面だけを見ると細かな決まりの寄せ集めのように見える。じゃが実際には、会社という仕組みをどう安全に動かすかを考える学問なんじゃよ。
会社には、株主がおる。取締役がおる。監査役がおる。債権者もおる。
それぞれ立場も利害も少しずつ違う。
企業法は、その者たちが好き勝手に動いて混乱せんよう、一定の筋道を与えておるんじゃ。
じゃからのう、企業法をただの暗記科目として扱うと、どうしても苦しくなる。
条文の文言は大事じゃ。じゃが、それをただ丸のみするのではなく、「誰を守るためのルールか」「何を防ぐための制度か」を考えながら読まねば、本番で少し角度を変えられたときに崩れてしまうんじゃよ。
企業法で孫がまず意識すべき三つの視点
会計ばあの整理箱
1.誰のための規制か
2.どんな不都合を防ぐための規制か
3.例外が置かれているのはなぜか
たとえば、取締役の責任に関する論点を見るとする。
ここで大事なのは、「責任が重い」「責任が軽減できる」という表面だけではない。
会社財産を預かる立場の者が、勝手気ままに振る舞えば、最終的に困るのは株主や債権者じゃ。
だから責任が置かれておる。
いっぽうで、責任を重くしすぎると、今度は誰も役員を引き受けたがらなくなる。
そこで一定の要件のもとで責任軽減制度が設けられる。
こうして見ると、条文はただの決まりではなく、現実のバランスを取るための工夫として見えてくるじゃろう。
点で覚えると苦しい。線でつなげると強くなる
企業法が苦手な受験生の多くは、論点を一つひとつ別の箱に入れて覚えようとする。
取締役会設置会社、株主総会、募集株式、機関設計、利益相反取引、責任追及。
どれも個別に見れば覚えることは多い。
じゃが本当は、これらは全部つながっておる。
「会社を誰がどう動かすか」
「その権限にどう歯止めをかけるか」
「問題が起きたとき誰が責任を負うか」
こうして一つの流れで見ると、知識がばらばらになりにくい。
企業法の勉強では、制度の全体像を先に持つことが大事じゃ。
鳥が空を飛ぶときも、目の前の枝だけ見ては飛べん。全体の風向きと流れを見て動くものじゃろう。企業法も同じなんじゃよ。
本試験で差がつくのは「条文の趣旨」を持っているかどうか
会計士試験では、知識をそのまま書けば済む場面ばかりではない。
似た制度の違いを問われたり、例外の理由を聞かれたり、複数の論点をまたいで考えさせたりする。
そういうとき、ただ文言を暗記しただけでは弱いんじゃ。
- なぜ株主総会の決議が必要なのか
- なぜ取締役会に委ねられるのか
- なぜ債権者保護手続があるのか
- なぜ公開会社ではルールが厳しくなるのか
こうした「なぜ」に答えられるようになると、記述でも択一でもぶれにくくなる。
企業法は言い換えれば、会社という共同体の秩序をどう保つかの学問じゃからのう。
秩序を守る理由が分かれば、条文の位置づけも見えやすくなる。
会計ばあがすすめる復習の仕方
復習の手順
1.まず条文やテキストの結論を確認する
2.次に「誰を守る規定か」を一言で言う
3.さらに「この制度がないと何が起きるか」を考える
4.最後に、似た制度との違いを比べる
この流れで勉強すると、企業法の知識はずいぶん強くなる。
単なる暗記ではなく、筋道として頭に入るからじゃ。
特に短答でも論文でも、制度趣旨を意識しておる受験生は、問題文の誘導に振り回されにくい。
それともう一つ。
企業法は、最初から完璧に整理できなくても構わん。
むしろ最初は混ざって当然じゃ。
じゃが、混ざったままにせず、毎回「何が違うのか」を言葉で拾うこと。
それを繰り返すと、少しずつ輪郭がはっきりしてくるんじゃよ。
孫へ、今日の締めくくり
今日のまとめ
企業法は、条文を覚えるだけの科目ではない。
「誰を守るか」「何を防ぐか」「なぜこのルールがあるか」を考えながら学ぶこと。
そうすれば、制度と制度が線でつながり、試験でも折れにくい知識になるんじゃよ。
孫よ、企業法は一見すると堅くて冷たい科目に見えるかもしれん。
じゃがその中身は、人が集まって商いをし、責任を分け合い、秩序を保ちながら前へ進むための知恵なんじゃ。
条文の向こうにある人の動きと利害を想像しながら学びなさい。
そうすれば企業法は、ただの暗記事項ではなく、きちんと意味のある言葉としておぬしの中に根を下ろしていくはずじゃよ。